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杉浦藍「Loose Elastics」

展覧会情報

2025.09.12

杉浦藍「Loose Elastics」

杉浦藍「Loose Elastics」

私が滞在していたアメリカの街には、さまざまなゴミや、ゴミとは言いきれないものが落ちていました。ある日ふと、路上に落ちている輪ゴムの存在に気がつきました。
 
落とし物には、必ず落とした誰かがいます。輪ゴムも、いつのまにか誰かの手や身体から離れ、気づかぬうちに地面へとこぼれ落ちたのでしょう。そう想像すると、それはただのゴミではなく、人の営みや身体の動きと深く結びついた、日々の活動の痕跡として立ち現れてくるように思えました。
 
人は、日用品の役目が終わると、それを意識的にも無意識的にも手放してしまいます。とくに都市生活では、人や物の動きが流動的で、「落とす」という些細な行為が日々繰り返され、その痕跡が街のあちこちに散りばめられています。また、同じ道を何度も歩くなかで、昨日見た輪ゴムが今日も同じ場所に残っていることもあれば、いつのまにか風や雨、あるいは清掃によって静かに姿を消していることもありました。都市の時間がせわしなく過ぎていくなかで、道に落ちている輪ゴムの存在は、淡く、しかし確かに、自然な時間の経過を可視化するものでした。
                                                                                                                                      
役目を終えた輪ゴムは、物理的な束縛から解放され、地面の上で小さな変化を繰り返しながら、偶然そこに生まれた「自由なかたち」へと変化していきます。その歪みやねじれは、それぞれ異なるリズムをもち、まるで地面に描かれた小さなドローイングのようでもありました。
 
私は、こうした輪ゴムの姿を写真によって記録することにしました。それは、私がこの都市で活動するなかで「それに出会った」という時間と空間を切り取る行為であり、ただの記録の集積から、その場所に暮らす人々のリズムや行動の痕跡を観察する試みでもあります。

【開催概要】
会期:202394日(木)〜920日(土)110017:00 日曜休廊 (918日の祝日は開廊)
会場:Gallery of The Fine Art Laboratory
187-8505  東京都  小平市小川町1-736 武蔵野美術大学2号館1
主催:Gallery of The Fine Art Laboratory(彫刻学科研究室企画)

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