彫刻F/G(実在実習:金属・石彫・木彫)
担当教員:
[金属]桑名 紗衣子、牛島 達治、保井 智貴、細井 篤、三沢 厚彦、伊藤 誠、冨井 大裕
[石彫・木彫]戸田 裕介、山本 一弥、長谷川 さち、大槻 孝之、髙野 正晃、松本 隆、人見 崇子、川﨑 広平、岡田 健太郎 、諸貫 きよ恵、正親 優哉、杉内 あやの
授業概要:
金属を素材とした実材実習。ブロンズあるいは鉄のいずれかを選択する。少人数制の実習で行うため、前半の彫刻Fと後半の彫刻Gの2グループに分けて行う。また、この実習は工房を駆使して表現する者として、作業環境を意識しながら表現に向かうための総合的な指導でもある。基礎過程(2年次)のカリキュラムポリシーに基づき、専門分野の基盤である素材の歴史性と媒体の独自性を追求するプロセスを学ぶ。
◯ブロンズ鋳造:
等身のスケールで頭像を制作し、塑像からブロンズ鋳造までのプロセスを習得する。粘土、石膏、ワックス、ブロンズの各工程において、ブロンズ鋳造の実践を専門とする教員による実技指導によって、モデル(原形)モールド(鋳型)の技法を体験し、素材の変換の技術であるキャスティング(鋳造)を追求する。また、専門領域の教員のみならず、様々な表現で作家として活動している教員の講評を受けることにより表現の多様性とその方法の展開を理解する。
◯鉄実習:
鉄は空間構築の表現が自由で容易な造形素材であると同時に、日常的な生活環境をつくり出しているいわば工業的な素材でもある。極論すれば、鉄に関する技術を駆使すれば生活に関わるすべてのものを制作する事ができると言えるだろう。このような環境に密着した技術の歴史を持つものであることを視野に入れつつ、厚さ3.2㎜の鉄板のみを素材として、作品から創出される空間についての表現を展開させる。この課題はカリキュラムポリシーに基づき、金属を表現媒体として実践する教員により1週間の基礎実習を行った後、専門領域の教員のみならず、様々な表現で作家として活動している教員の指導を受けることにより表現の多様性とその方法の展開を理解する。
[石彫]
素材:自然石(安山岩)を約2切(2サイ/約30×30×60㎝)程度
モチーフ:人体モデル(頭部)
この授業では、自然石(安山岩)を素材として人体モデル(頭部)を制作します。
石彫の歴史は古く、現在使われている石彫工具の大半が出そろった古典古代を遙かに越えてさかのぼることが出来ます。多くの遺跡や過去の作例からも判る通り、石は彫刻素材として堅牢で、有に数千年の歳月を越えてその形状を保つことが可能です。また、石彫の制作過程には、人と物との原初的な関わりが色濃く残っており、今日でも多くの人々を素朴な魅力に惹きつけ、塑造、木彫、金属造形と並んで、彫刻領域のスタンダードの一つに数えられています。
一方、現代の美術では、人工材料やレディメイド(既製品)の使用を含め、ありとあらゆるものが美術表現の素材としてはじめから容認され、ブリコラージュ(日曜大工)的な仕事による表現活動は既に一般的になりました。そういった現代の美術が置かれた状況において「石彫」は、他の素材に比べ、まず基本的な技術修得や経験を必要とされることから、正負両面から見直されるべき制作領域でもあります。
この授業では、「石彫」の基本的技術を習得すると同時に、各自が素材とモチーフとの間で、試行錯誤しながら造形の端緒を見出すことを望みます。
[木彫]素材:木材
モチーフ:人体モデル(頭部)
この授業では、木材を素材として人体モデル(胸像)を制作します。
木材は原木丸太を使用します。はじめにモチーフをあらゆる角度から観察し、紙にデッサンを繰り返します。モチーフの持つ量や動き、面の繋がりなどを捉え、制作する部分だけでなく全身を描くことでモチーフの独自の形や全体との関係性を把握します。
墨で木材に捉えた形をデッサンし、鋸で切断します。切断した木材を接合、接着することでより自由に形を動かすことができます。大きな面を鋸で、小さい面をのみで量を大きく動かしながら、モチーフに近づけていきます。手で使用する道具を使用し、素材の持つ力を体感し、制作上での必要な技術を学びます。
徹底的な観察と思考、素材への働きかけ、その繰り返しの中で行われるやりとりが、この授業の重要な部分です。粘り強く制作に取り組み、時間をかけて造形する面白さや、新たな視点を獲得してください。